2015年4月26日日曜日

尺八を始めるきっかけ。

   尺八を演奏をしていてよく聞かれるのは『どうして尺八を始めたのですか?』という質問です。

   習い事の定番のピアノ、部活動で触れる機会のあるフルートやサックスなどの吹奏楽器、あるいはポップスなどで活躍するギターなんかと比べると、尺八は実際に生の演奏を聴いたり楽器に触れるチャンスが少ないかもしれません。

    尺八を始めるきっかけとしては、
1、家族や親戚が尺八や箏などを演奏している、または教えている。
2、近所にたまたま尺八の先生がいた。
3、学校、大学で邦楽部や邦楽サークルに入る。
4、CDやテレビ、ラジオなどのメディアを通して尺八を聴いて興味を持つ。

などが挙げられそうです。
   
    自分の場合はパターン1のバリエーションでしょうか。趣味で民謡を歌っていた祖母の知り合いに尺八を教えてくれる先生がいたことがきっかけになりました。

     きっかけは何であれ、一度尺八を始めればその魅力にどっぷりはまってしまう人は多いようです。

    

    

   



2015年4月11日土曜日

『春の海』とヴァイオリン。

     おそらく箏と尺八の音楽ではもっとも日本人に馴染みのある『春の海』ですが、作曲された当初は意外なことに宮城道雄の家族には不評だったようで『出だしの尺八のメロディーが俗っぽい』…などと言われたそうです。

     そんな『春の海』ですが、作曲から約二年後、宮城道雄とフランスの女流ヴァイオリニスト、ルネ・シュメーによって演奏され好評となり、また二人の演奏によるレコードも作られ大ヒットし、国外でも発売されました。今でこそ日本の楽器と洋楽器の演奏は当たり前になりましたが、それが昭和7年の事ですからその先進性に驚きます。

   その当時、フランス人のヴァイオリニストが『春の海』を演奏したいと思ったのは、宮城道雄の作品が日本的な抒情を表現するだけでなく普遍的な音楽としての魅了を備えていたからだと思います。現在でも箏・尺八奏者にとって重要なレパートリーであることは言うまでもなく、ヴァイオリンやフルートなどの洋楽器によって演奏され、多くの人に受け入れられていることがその証明だと思います。
  
     

     

    

2015年4月10日金曜日

尺八といえば…あの曲?

    一口に尺八の音楽と言っても演奏されるジャンルは様々です。虚無僧が吹いていた『本曲』と呼ばれる古典、箏・三絃(三味線)と合奏する『三曲』、民謡、詩吟、現代的音楽、ジャズ、ポップス…などなど。
    そんな中で、おそらく一番多くの人に知られている曲は箏と尺八の二重奏『春の海』ではないでしょうか。タイトルを聞いて分からない人も、出だしの箏のフレーズを聴くだけで「ああ!お正月によく聞く曲!」と分かってもらえると思います。
   作曲者は宮城道雄。お箏の名手であり、また作曲でも現代に残る名曲を多く残しました。昭和5年の勅題(歌会始のお題)『海辺の巌』に因んで、その前年昭和4年に作曲されました。宮城道雄が実際に旅した広島県の鞆の浦の印象をもとに、春の長閑な内海の雰囲気、波が岩に砕ける様などが表現されています。
   お正月になるといたる所で流れている『春の海』ですが、尺八の人間国宝である青木鈴慕先生の録音が使われている事が多く尺八吹きとしてはつい聴き入ってしまいます。



尺八といえば、あの音?

   尺八と聞いてどんな音を思い浮かべますか?

   時代劇などで効果音的に使われる「ブフォーーッ」と鳴るあの音を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。息の音を含み、かすれたようなこの音は『ムラ息』という尺八の奏法から生まれるものです。とても印象的な音ですよね。
  しかし、尺八の演奏にとってムラ息は特殊な奏法なので、年がら年中ムラ息を吹いているわけではありません。やはり基本はなめらかな音を出すことです。もともと尺八の古典の音楽に出てくるムラ息ですが、そのインパクトは海を越えてフルートの現代的な奏法にまで取り入れられています。
   
 





2015年4月8日水曜日

首振り三年…?その続き。

   さて、『首振り三年』に続く言葉ですが、それは『コロ八年』です。
“コロ”という言葉が一般的ではない為か、後半部分の『コロ八年』は意外と知られていなかったりします。
   前回の記事で首振りは尺八の“ユリ”という奏法であることを書きました。では“コロ”は何かというと、尺八に特有のトレモロである“コロコロ”という奏法を指します。
   尺八の下から三番目の孔を閉じた状態で、一番下の孔(1孔)と下から二番目の孔(2孔)を交互に閉じます。そして、この際に重要なポイントは1孔と2孔の開閉が入れ替わる時に瞬間的に両方の孔を閉じた状態を通過することです。このことによりまさに「コロコロコロコロ…」と聞こえる、そんな奏法です。

   『首振り三年コロ八年』。首振りとコロ。どちらも尺八らしい奏法でそれぞれに難しさはありますが、三年、八年というのはただ語呂が良いだけで大げさだと思います(桃栗三年柿八年のもじりですよね…)。

2015年4月6日月曜日

首振り三年…

  『尺八は難しい?』という記事にも出てきた「首振り三年」という言葉。これは尺八の“ユリ”という奏法の事をさしていると思われます。“ユリ”というのは尺八に特有のビブラート的な奏法で、首(頭?)を左右、上下、あるいは回すように振る事によって音の高さに変化を付けます。実際には首を振ることで、歌口(尺八の息の入り口)の唇によって塞がれている面積が変化します。尺八の歌口は意外と大きくて直径約2センチ程あります。吹奏時にはこの歌口を唇で3分の2程は塞いでいるイメージです。“ユリ”ではこの唇で塞がれている面積が変化します。より多く塞ぐと音は低く、より少なく塞ぐと音は高くなります。ビブラートという言葉ではわりと狭い幅の音の揺れをイメージしますが、尺八の“ユリ”ではかなり大きな幅で音の高さに変化を付けることが可能です。
  尺八吹きとしては「首振り」という言葉は実感としてしっくりきません。あくまで、首を振ってるよね…という周りからの視点ですね。またユリは奥の深い奏法ではありますが、「3年」は大げさじゃないかな?というのが大方の尺八奏者の意見ではないかと思います。
   さて、『首振り三年』。この言葉には続きがあるのはご存知ですか?
  次回に続きます。

2015年4月5日日曜日

たけのこ。

   春の味覚の『筍』。天ぷら、炊き込みごはん、若竹煮…どれも美味しいですね。尺八は竹でできていますが、竹の中でも『真竹(マダケ)』という種類の竹を使って作られます。一般によく食べられるのは孟宗竹の筍です。真竹は別名ニガタケと呼ばれていますから、食用にはアクが強いのかもしれません。
   真竹は孟宗竹にくらべて肉厚で加工に適しているので、尺八だけでなく様々な工芸的な物の素材に用いられています。
   竹は成長が早いですし、竹やぶを見ると尺八の材料には事欠かないよう思えますが、太さ、節の数(一本の尺八には7つの節があるのが基本)、曲がり工合…など条件に合う竹を探し出すには大変な苦労があるようです。
   

2015年4月4日土曜日

尺八には五つの孔(あな)

   伝統的な尺八には5つの孔があります。前側に4つ、後ろに1つ。順番に下から開けていくとレファソラドという音階になります。このレファソラドの音階を使うとわらべうた(あんたがたどこさ…)とか民謡(花笠音頭とかソーラン節…)が吹けます。ですが、このレ〜ドの音階では限られた音楽しか演奏できません。例えば、レからファの間には(ピアノの鍵盤を思い出してください)♯レとミの二つの音があります。この音を出すには、一番下の孔を微妙に開けると同時に顎を引いて調整をしなければいけません。さらに2つ音がありますから、その調整を2段階に行うことになります。(とここまで文章にして、我ながらわかりにくい…。実際に演奏を見てもらえばすぐに理解していただけると思います。)
メリ音と呼ばれるこの音を出せるようになると、ぐっと演奏できる曲が増えます。